クリエイティブ業界やSI業界、建築業会等の分野でのお仕事は、
成果物に対して報酬が支払われる「請負契約」が大半を占めています。
その中でも特に受託制作を中心としたデザイン制作、システム開発では、成果物の特性が「無形資産」、原価の大半が「人件費」を占めています。
今回は、人件費を元に無形資産を生み出すクリエイティブ業界において必要なプロジェクト管理の勘所についてお話しさせていただきます。
プロジェクトとは
まず初めに、「プロジェクト」とはなんでしょうか?
WIKIPEDIAによると、語源はラテン語のpro + jectであり、「前方(未来)に向かって投げかけること」であり、何らかの目標を達成するための計画のことと説明されています。
具体的に言うと、「目標達成するための業務」がプロジェクトであり、そのプロジェクトを行っていくメンバーやチームを、それぞれプロジェクトメンバー、プロジェクトチームと呼ばれます。
そして、プロジェクト開始時には、必ず以下について定義されています。
① プロジェクトが始まるにあたる経緯(目的)
② プロジェクトが完了する条件(GOAL)
例えば、ウェブサイト制作の依頼があった際には、クライアントの視点から①として考えられるものとしては、
- 新規商材のさらなる集客のため
- 事業拡大における増員に対応するため
などのケースがあり、その結果②としては
- 売上高について前年対比で15%UP
- 3名の正社員の増員が完了すること
など、必ず定量的なGOALが設定されているはずです。
つまり、世の中でプロジェクトと呼ばれるものには、目標を達成するために、どんなものにも「はじまり(目的)」と「おわり(GOAL)」が決められていると言うことになります。
その体系化された手法は様々あり、有名どころではアメリカ発の「PMBOK」やイギリス発の「PRINCE2」などが挙げられますが、どちらの手法も共に「Q(品質)・C(コスト)・D(納期)」という管理すべきパラメータが含まれており、最低でもこの3つはプロジェクト管理において必須です。
QCD?
QCD製造業における生産管理などでよく使われる言葉で、詳細な説明はここでは割愛させていただきますが、概ね以下の通りです。
- QとはQuality(品質)のことであり、顧客の要求に、製品からサービス全体が満たしているかという点で判断される
- CとはCost(コスト)のことであり、生産や納品にかかる総費用のことで、変動費と固定費の両方を含む
- DとはDelivery(納期)のことであり、生産ライン上で製品が完成するまでの期間、つまりは原材料から製造、発送までのリードタイムも含まれる
ここで重要なのは、この3つの観点が独立しているのではなく、全て関連し依存していることです。3つの要素を網羅的に考慮する必要があり、プロジェクトにおいてどれか一つでも欠けた場合、プロジェクトが達成されないリスクが高まります。
- 品質が悪いとプロジェクトは完了しない
- コストがかかり過ぎるとプロジェクトを持続できない
- 納期遅れはビジネスチャンスを逃し成果が出ない
プロジェクト管理の具体策
ディレクターやプロジェクトマネージャーは、様々な管理手法については把握実践していると思いますが、それだけではプロジェクトを成功裏に導くには十分ではありません。プロジェクトメンバー全員が、目標達成のための観点を持つことが最も必要です。
しかし、PMBOKなどの複雑で専門的な管理手法を全員が習得することは、時間に限りがあること、得意不得意があることから現実的ではありません。
QCDという観点であれば、シンプルでわかりやすく、比較的習得スピードも早いため、プロジェクトメンバー全員が成果を意識することが可能になります。
以上を踏まえ、メンバー全員で目標を達成するためのプロジェクト管理の流れについてまとめてみました。
プロジェクトの具体的な流れとしては以下の通りです。
- プロジェクト開始時、以下内容を定義し、キックオフ
- プロジェクトの目的、GOAL(KGI)
- WBS作成(プロジェクトを達成するために必要なタスク・工程の見える化)
- 予算作成(WBSのタスク・工程毎に、受注金額から予算割り振り)
- ガントチャート作成(WBSのタスク・工程を元に工程表を作成)
- KPI定義
etc… - プロジェクトメンバーは毎日、どの工程にどれだけの時間を使ったか、外注費をどの程度使ったかの記録を取る。この数値を元に、立てた予算に対してどの程度実績があったかが把握できるため、毎日漏らさず記録することが重要。
- 定期的にミーティングを行い、予算がオーバーしているものはないか、工程が遅れているものがないかなど、QCDの観点で問題はないかプロジェクトの進行状況をプロジェクトメンバーで確認する。問題・課題は放置せず都度対応する。
- プロジェクト完了(納品)
※ ここで終わってはいけない!!! - 必ず直後に振り返りを行う。QCDの観点から、プロジェクトのGOALがどう達成されたか、良かった点、改善できる点をプロジェクトメンバー全員で振り返ることで、次のプロジェクトに生かすことができる。
各種ツールについて
バルトで試したことのあるツールを、参考までに記載します。
- WBS・ガントチャート:Excel、Redmine、Jooto、Backlog、Trello、Wrike、Monday etc…
- 予実管理:Redmine、InnoPM(現CrowdLog)、Excel → 現在はWALZ
まとめ
バルトでは、デザイナー、エンジニアだけでなく、マーケターやライターなど、ビジネス文化が異なる様々な職種のメンバーとプロジェクトに参画いただくので、メンバー全員が目標達成をするための手法については、シンプルでわかりやすいことがとても重要でした。よって、プロジェクトの目的を把握し、QCDの観点を意識しながらGOALに向かう、という方法でプロジェクト達成率を上げることにしました。
もちろん、QCDでの管理は、時流から考え、古く、時にそれで網羅できない範囲も多いので時代遅れと言われることもあります。しかし、不十分であっても考えなくていいものでもありません。
バルトを含め、製造請負業、特にクリエイティブ業界では、グロスで利益が出ており、結果問題にならなければ、それ以上試行錯誤したり、手法を変えようとしてこなかったのは事実です。しかし、社会に貢献するための自走するチームとして成長するためには、リーダーだけでなく、参画する一人ひとりが、プロジェクトのミッションを把握し、定性的かつ定量的に成果と向き合うことが重要です。
今回はWALZが生まれた背景にあるプロジェクト管理の考え方について、改めて記事にさせていただきました。クリエイティブ業界に携わられながら、プロジェクト運営の面で何かしっくりとこられていない方の参考になればとても嬉しいです。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。